山口県の昆虫類・クモ類の概要

 昆虫・クモ類は種類の多い生物集団で2015年末現在、山口県で26目462科8,236種(昆虫類:25目419科7,943種、クモ類:1目43科293種)が確認されている。これは2002年発行の‘レッドデータブックやまぐち’と比較すると78科1,437種も増えたことになる.野生生物のなかで特に昆虫類は種数の多い種群で,この中でコウチュウ目(101科2,892種)とチョウ目(65科2,506種)はもっとも多い分野である。

 本来カテゴリーのランクを決定する場合、種数が定まっていて、かつ担当者が継続して調査活動をしていることが望ましいわけだが、2002年の選定時から続けて携わった方は限られている。しかも毎年新たな種が多く発見されるなど、実態は刻々変化する過程の中でその推移を見極めることは非常に困難を伴うことになる。よって2015年時点の目録から一律の基準を設けて絶滅危惧種を選定することは、各分野間の温度差を考えた場合,無理が生じてくるため掲載種は各担当者の判断に基づき選定している。

 種を選定する際の基準となるものは積み重ねられたデータにほかならない。このたびの掲載種を見た場合、ランク別けされた分野で例えば、トンボ目やチョウ目の蝶類では情報不足種として見直しされた種は一種類も選定されていない。反面コウチュウ目やハチ目、ハエ目では圧倒的に情報不足種の方がランク付けされた種より多い結果となっている。このことは種類の多さもさることながら、その種の実態を把握するまでに至らないといえる。またチョウ目の蛾類のように種数が多いにも関わらず、ランク付けされた種が少なく限られ、目によっては情報不足種だけ選定された分野もある。

 これから判るようにトンボ目やチョウ目の蝶類の場合は、既に県内に生息する種数が決定され調査も県内のほぼ全域に渡り調べられてきた結果、選定種の推移が分析できたからといえる。昆虫相の解明は採集と観察による記録の集積が基本となる。これは同好者の数と活動量によって大きく左右されるため、目によってはほとんど解明されてない分野もあるが、今回の見直しでは13目105科392種(昆虫類:12目102科388種、クモ類:1目3科4種)を、山口県の昆虫・クモ類としてレッドデータブックやまぐち2019に掲載することになった。

 レッドデータブックやまぐち(2002)と比較すると新たに絶滅種や絶滅危惧ⅠA類に選定された種が見られる反面、カテゴリーのランクのアップやダウンが生じたり、前回の選定から対象外になるなど全ての分野でカテゴリーの変更が見られる。このことは生き物である限り固定される種は存在しないということで、地球の温暖化など様々な気象条件により予想もしないような災害に見舞われた場合など、小さな生物群である昆虫やクモ類にとっては大きな影響を受けることは必至となる。この様に生き物を対象とする限り環境の変化とともに絶えず状況は推移するため、定期的な見直しは今後も不可欠なことになる。

 21世紀は共生の時代だといわれ18年が経過した。生物多様性についても事あるたびに叫ばれだした節目の年に、山口県のレッドデータブックやまぐち2019が完成することは大変意義深いことである。これからの保全活動に役立つ資料として活用されることを期待するものである。

 おわりに、この見直し調査にあたり現地調査の活動にご協力いただき、貴重な生態写真の提供を受けた山口むしの会の管 哲郎氏(宇部市)をはじめ、山本匡章氏(下関市)、相本篤志氏(防府市)、吉原太一氏(周南市)ならびに、ご支援をいただいた会員諸氏および会員外の樋口尚樹氏(萩市)、浴井 遥氏(周南市)にも感謝したい。また昆虫類の標本写真の撮影にあたり、ご理解いただいた山口県立山口博物館殿にも心より厚くお礼申しあげる。

【執筆者:後藤和夫】

(昆虫類執筆担当者)

氏 名 役 職 担  当  分  野(目)
後藤 和夫 会長 総括
稲田 博夫 副会長 チョウ(蝶類)
福田 竹美 事務局長 ナナフシ・バッタ・カマキリ・アミメカゲロウ
五味 清 地区幹事・事務局補佐 チョウ(蝶類)
伊ヶ﨑 伸彦 地区幹事 カメムシ
椋木 博昭 地区幹事 コウチュウ
下野 誠之 山口むしの会会員 コウチュウ
辻 雄介 山口むしの会会員 コウチュウ
中村 孝 保全委員 ハチ
柿沼 進 山口むしの会会員 ハエ
川元 裕 地区幹事 ハチ・ハエ
後藤 益滋 山口むしの会会員 トビケラ
重中 良之 保全委員 チョウ(蛾類)
村田 淳 地区幹事 チョウ(蛾類)
伴 一利 地区幹事 トンボ
協力者
管 哲郎
山本匡章
吉原太一
山口むしの会会員(監査)
山口むしの会会員(保全委員)
山口むしの会会員

(クモ類執筆担当者)
  増原啓一 (日本蜘蛛学会会員)